起業家による、市場規模解説

【#1 カミナシ 諸岡裕人氏】 起業家による、市場規模解説

市場規模をどう捉えているか、どのように自社サービスを伸ばしていくのか。経営者の見解は、投資検討の際にとても気になる点です。
この企画では様々な起業家に、TAM、SAM、SOMを軸に解説していただきます。

第一弾の解説者は、株式会社カミナシ 代表取締役 諸岡裕人さん。
2020年12月開催 LAUNCHPAD SaaSの優勝者である諸岡さん。カミナシは、工場作業のペーパーレス化(チェックリストの電子化)など現場のムダを自動化するツール。”ノンデスクワーカーの才能を解き放つ”をミッションに、オペレーション実行分野におけるSaaSサービスを展開しています。

諸岡 裕人 株式会社カミナシ 代表取締役 
慶応大学経済学部卒業。リクルートスタッフィングに入社し営業職を担当。家業であるワールドエンタプライズ株式会社(社員数3,000人)に入社。機内食工場、ホテル客室清掃、バスポーター事業、空港業務など、ブルーカラーの現場業務を運営。原体験から、2016年12月に株式会社カミナシ(旧社名:ユリシーズ株式会社)を創業し、ノンデスクワーカーの業務を効率化する現場管理アプリ「カミナシ」を開発。
Twitter:https://twitter.com/morooka_hiroto
note:https://note.com/kaminashi_ceo

カミナシWebサイト:https://corp.kaminashi.jp/
カミナシ採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/kaminashi

諸岡さんが考える、サービス(カミナシ)のTAM SAM SOM(以下:諸岡さんより)

カミナシ

カミナシ

TAM:22兆6200億円
ノンデスクワーカー管理職人件費=360万円×620万人
・人件費平均年収:360万円
・ノンデスクワーカー*:3100万人
・管理職の割合:20%*

カミナシのようなオペレーション実行のSaaSは「人件費」がTAMに当たります。”品質レベルが上がる” と、”教育コストが無駄にならない”、つまり”人件費に関わる”という考え方です。カミナシで最も分かりやすいROI(投資利益率)は「管理職の作業時間削減」。
私たちの場合、流通総額=市場規模ではありません。あくまでもSAMとSOMで具体化し、リアルなマーケット規模の出発点をどこに置くか?という指標として捉えています。加えて、トランザクション、マーケットプレイス、課金モデル等を除いて、SaaSで流通総額をTAMに置くのも誤りだと考えます。
*ノンデスクワーカー:オフィス以外で働く人。工場作業者、警備員、設備メンテナンス、飲食店の従業員等
*独立行政法人労働政策研究・研修機構「職業別就業者数」よりカミナシ社が算出した数字
*一般的な管理職の割合と言われている

SAM:2.6兆円
カミナシの対象社数×将来ARPU=146万社×15万円
カミナシの対象社数:顧客数
将来ARPU:想定単価

SAMは、自分たちのプロダクトが進化、多機能化することで獲得できる、5年ほど先の市場イメージです。「顧客数」×「想定単価」で割り出せます。

「顧客数」については、対象顧客のペインを把握し、プロダクトロードマップを描き、それによって獲得できる数を算出します。カミナシが定義するペインとは、”電子化可能な作業を紙ベースで行うこと”、”手動作業のためミスが減らないこと”の2つです。

「想定単価」については、ボトムアップとトップダウンの2つの考え方があります。
ボトムアップについては、現プロダクトの平均単価が7.5万円。単純に機能を追加していくことで、市場規模が広がり、単価も上がるという考え方です。
トップダウンについては、私たちはARR(年間経常収益)100億円を目指しています。そうなると逆算で15万円は必要になるという考え方です。

SAMについては、プロダクトや最初の初期市場を対象にしたSOMを算出してからのほうが算出しやすいと思います。
*ARPU:1ユーザーあたりの平均的売り上げを示す指標

SOM:228億円
売上規模上位20%の会社数×ARPU=30万社×7.6万円

SOMは現プロダクトで獲得可能な市場のこと。この数値は最も信頼性のあるものになります。この数値は、現在のARPU×顧客数で算出しました。SOMとSAMの対象顧客はほぼ同じだと考えています。
VCもSOMの解像度は高く要求してくるかと思います。クリティカルであり、実現可能性があり、単体(ペインの解決のみ)で上場ができるかどうか、という視点が大事です。おそらくシード〜シリーズB・Cくらいまでは、この市場と腰を据えて戦うイメージです。

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