「Why Now?」日本の音声市場はなぜ今なのか?

「Why Now?」日本の音声市場はなぜ今なのか?

こんにちは。Headline AsiaのAssociateの西島です。6月25日に開催する「LAUNCHPAD Entertainment」ではクリエイターエコノミーや音声コンテンツなど、近年急成長を遂げている分野のスタートアップが多く登壇します。

その中でも今回は音声市場に注目をして、なぜ今音声市場が伸びているのかをいくつかのデータを見てみたいと思います。

日本では2月頃に話題となったclubhouseを筆頭に今、音声市場が注目を浴びていますが、本当にclubhouseが日本の音声市場の人気に火をつけたと言って良いのでしょうか?
海外では後ほど説明するように数年前から音声コンテンツが注目されていました。他のマーケットでもそうですが、なぜ海外の流行が数年遅れて日本にやってくるのでしょうか。なるべくデータに基づいて考察してみたいと思います。

これらは音声コンテンツに限らずですが、音声コンテンツの普及には大きく分けて3つの要因が影響しています。
それは、デバイスの普及、コンテンツの数、外部環境要因です。

1, Amazon Echoなどのデバイスの普及
AirPods ProやAmazon Echoといったデバイスの普及は音声コンテンツの需要を増やしています。
アメリカの公共ラジオネットワークのNPRと調査会社のEdison Researchのレポートによると18歳以上のアメリカ人の24%にあたる6000万人がスマートスピーカーを所持しています。

さらに同調査によると、スマートスピーカーの所有者はスマートフォンのボイス機能の使用者に比べて音楽やラジオを聴く人が多いという結果も出ています。つまり、スマートスピーカーの普及は音声コンテンツの普及にも繋がると考えられます。

一方で、NRIの調査によると2020年時点での日本におけるスマートスピーカーの保有世帯数・普及率は540万世帯、全体の10.4%とアメリカの数字を大幅に下回っています。しかし、今後大幅な普及が予測されているため、音声市場にもプラスの影響を与えることが期待されます。

2, コンテンツの数
上記のような原因で需要が増えたとしても、供給側、すなわち音声コンテンツの数が足りないと、ユーザーは増えていきません。
ポッドキャストのコンテンツ作成に最も注力している企業の一つがSpotifyです。2019年のCES(Consumer Electronics Show)でHead of Spotify StudiosであるCourtney Holtが「we become very focused on building out a great podcast universe(素晴らしいポッドキャストの世界を構築することに注力する。)」と述べ、イーロンマスクとのインタビューで有名な”The Joe Rogan Experience”(2021年5月31日現在でYouTubeのチャンネル登録者数は1070万人)と複数年の契約を結ぶなどコンテンツ制作に力を入れています。

また、Spotifyはポッドキャスト関連のスタートアップの買収にも力を入れており、ポッドキャストのホスティングと広告のプラットフォームであるMegaphoneの$235Mでの買収をはじめとして、ポッドキャスト制作会社のGimletや編集ツールのAnchorなどを買収しました。

そういった影響もあってか、2018年に50万であったアクティブポッドキャスト数は2020年に85万となり、エピソード数は3000万を超えました。(source)

一方、ポッドキャストというコンテンツの性質上、言語という壁は大きく立ちはだかっています。MAGNA Intelligenceが2019年に発表したレポートでは「各国のポッドキャストを月に一回は聴く人の割合」が以下のように表されています。

THE PODCASTING REPORT

ここで、Statistaによる「世界で最も話されている言語ランキング」を見ると上記のサーベイと大きな相関性があるように感じます。

→言語の人口に比例(青色:母語話者・黒色:第二言語話者)(世界の言語ランキング【決定版】!最強の言語【TOP10】を紹介します。 / Statista

つまり、言語の話者が多いほど音声コンテンツの需要も供給も増えて、ネットワーク効果が働きやすいということが予想されます。そういった理由で日本の音声市場が英語圏の市場より少し遅れて台頭してきていると考えることができます。

3, 外部環境要因
最後は外部環境要因です。よく言われてきたことで、「アメリカ人は車通勤が多いからポッドキャストやラジオといった音声コンテンツがよく聞かれる」といったことがあります。確かに、アメリカ人と違って日本では電車通勤が多く、その場合耳だけでなく手も自由に使うことができるので、スマホを見る人の方が多かったことは納得ができます。

しかし、そこに大きな影響を与えたのはコロナウイルスによるパンデミック、そしてそれがもたらしたリモートワークの影響です。

先ほども引用したNPRとEdison ResearchのレポートやEdison Researchの別のレポートではコロナウイルスによるアメリカ人の行動変容について記載されています。

レポートによるとアメリカの成人のうち、コロナによるパンデミックの影響で90%以上の人が必要最低限の外出しかしなくなり、26%の人が自宅からリモートワークをしています。

その影響で、音声コンテンツを家で聴く時間が20%以上増加し、さらにポッドキャストやスマートスピーカーが耳の可処分時間に占める割合も跳ね上がったとも記載いされています。

おそらく日本でもリモートワークが普及したことによって、今までオフィスでは聴くことのなかった時間にBGMとして音声コンテンツを聴く人が増えるなどアメリカに似た変化が起こっているのだと思います。

clubhouseが日本で爆発的に流行った原因についてVoicyの緒方さんもForbesの記事で「Clubhouseは2020年3月にアメリカでリリースされたサービスです。海外ではすでに広がっていて、その盛り上がりは一旦落ち着いていましたが、日本で急激に広がったのは緊急事態宣言の影響が大きいと思います。20時以降、人に直接会うのが難しくなった、まさに今しかないというタイミングでした。」とコロナウイルスに起因する緊急事態宣言の影響について述べています。

以上をまとめると、デバイスの普及や音声コンテンツの数がアメリカの数年遅れになっているというデータや、コロナウイルスという外部環境要因が日本で音声市場が今盛り上がり始めている背景になっていると考えます。

他にも何か面白いデータを知っている方がいればぜひ、教えてください!

25日のLAUNCHPAD Entertainmentに登壇するRadiotalkは日本の音声市場を牽引するスタートアップの一つです。ぜひ、当日のプレゼンを楽しみにしてください!

【LAUNCHPAD Entertainment 開催概要 】
日時:2021/6/25(金) 15:00〜 (表彰式終了後、招待者限定でオフラインでのネットワーキングを実施します。)
YouTube LIVE URL:http://bit.ly/launchpad_entertainment
Googleカレンダーへ登録:http://bit.ly/lpf_google_calender

当日のピッチはYouTube LIVEにて生配信いたします。
上記のリンクよりYouTube LIVEのURLが記載されたカレンダーをワンクリックで登録可能ですので、ぜひ、ご登録下さい。

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